久しぶりに訪れた裂け谷。
広大な庭の奥に、見せたいものがあると言って、
彼は私の手を引いて案内してくれた。

「素晴らしい風景だね!」

林の中のぽかりと空いた小さな空間、二人並んで天を見上げれば
あとからあとから降りしきる、落葉の雨。
赤に黄色に茶に緑。
あとからあとから、視界いっぱい降りしきる。
晩秋の、この時期にしか見られない風景。
握った手に、きゅ、と力を込めて彼が笑う。
「レゴラスといっしょに、見たかったんです。」
小さな人の子の、ちいさな手のぬくもりに私も微笑みかえす。

しばらく天を見上げ続けて、ふと気がつくと。
「? エステル、どうしたの?」
いつの間にか灰青の瞳は天ではなく、地に向けられていた。
「どうしたの?」
顔を上げない彼の前に膝をつき、視線を合わせた。
「くび・・・」
「首?」
困ったような彼の顔。
「ずっと上を見ていたから、くび、いたくて・・・。」
そう言って、俯いてしまった。
「ああ、それはいけないね。」
「うん、でも・・・。」
まだ見ていたいのだろう、もう一度顔を天に向けるけど、
「・・・っ」
うう、と小さくうめいて慌てて地面に視線を戻す。
「くび、痛いのでしょう? 無理は駄目ですよ、エステル。」
それでも諦めきれない目をする彼に、私は提案する。
「そうだ、こうしましょう。」
「?」
私は落ち葉の絨毯に腰を下ろし、彼に両手を差し伸べる。
「お膝にすわって。」
「?? レゴラス?」
本を読み聞かせる時のように膝に座らせ、彼の背中を私の胸に預けさせ、
「わ・・・っ! レゴラス・・・!」
私は大地へと背を預けた。

私たちの視界を天から降る落葉がいっぱいに占める。
胸に広がる黒い髪、彼のぬくもり。
「わあ・・・!」
歓声を上げて、両の手を天に伸ばして。
「ね、これでくびを痛くしないで済むでしょう?」
「うん! あ、でもレゴラス、おもくないですか?」
体をずらそうとする彼をしっかり両の腕で抱き締める。
「平気。 このままでいて。」
羽毛のよう、とはいかないけれど、実際彼は軽かった。

あとからあとから降りしきる、落葉の雨。
今しか見られない風景。
−−−−ずっと一緒に見ていたいけれど。
今しか見られない風景。
とこしえを生きるエルフに、時間の有限を教えた人の子よ。
つきることなく降るように見えるこの落葉の雨も、いずれ。
いつまでも共に同じ風景を見たいと思っていても、いずれ。

思わず腕に力を込める。
「・・・レゴラス?」
「あ、ごめんね。」
呼びかけにはっとして、腕を解こうとする。
と、彼の小さな手が私の腕を引き止めた。
「エステル・・・?」
「レゴラス、あったかい・・・。」
「エステル・・・。」
あったかくて、と呟く彼の声はそのまま眠りの中へと沈んでしまった。

胸の上で眠り込んでしまった人の子に、エルフは微笑んだ。
大丈夫。
共に同じ風景を見ましょう。
人の子のぬくもりは、エルフの心の中を暖めた。
大丈夫。

まだまだ、この先も。
共に見たい風景がある。
























エステルがも〜抱きしめたい位に可愛いのですvv
裂け谷での風景というのは、幸せなのと同時に
後々のことを思うとちょっと切なかったり・・・
アラゴルンにとっては、幼少の頃、裂け谷で惜しみなく慈しまれて
育ったという記憶がその後の辛い旅の支えになっている、
という蛍火さまのお話にますます感じ入ってしまいましたvv

蛍火さま、本当にありがとうございました!
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