永遠の森 (song from a secret garden II) 



 裂け谷を護る結界はブルイネンの流れをその境としている。

霧ふり山脈側もその則に洩れず、目には見えぬ地に潜った清水を一歩踏み越えれば、森から吹き上がってくる風の色さえも変わるのだ。

清冽で優しい世界の果てに立つ一際大きなネルドレスの樹の下で、レゴラスは黙って付いて来ていたエステルを降り返った。

「もう、此処でいいよ」

旋風のように振り回してくれた少年と過ごすうちに定められた期日は瞬く間に過ぎた。

固く唇を引き結んで、自分を見上げてくる彼の背丈はまだ自分には届かないけれど、もう目線を合わせるために膝を折る必要はない。

(まだ憶えているのかな)

二人でした、沢山の約束の一つ。

―――さよなら、とは云わないこと。

十数年前に初めて逢った頃、未だ重心も上手く取れず少しの段差にさえ転びながら、それでも自分を追って何処までも付いて来ようとしたエステルが、あんまりにも泣くから。

未だ何処も彼処も柔らかい、でも確りと存在感のある重みを持つ小さな身体を膝の上に抱き上げて、その額に唇で触れて。

「エアレンディルの光があなたと共にありますように」

元気で、と別れの挨拶をするかわりに願いを込めれば、驚くぐらいに小さな手を一杯に伸ばして抱きついてきてくれた。

二度目に逢った時は、膝の辺りに在った筈の頭がもう腰まで来ていて。

目線を合わせる為に膝をついて樹の幹のような色合いの髪を漉きながら、また来るよと囁いたら、その印象的な昏い瞳を潤ませた彼は自分の服を掴んで、行かないでと言ってくれた。

そして、三度目に見た彼は。

何も言わない彼が、薄らと光を孕んだ闇色の瞳を伏せるのを待って、その額に唇で触れる。

芽吹いたばかりだと思っていたのに瞬く間に若樹になっていた彼は、もう嘗て逢った幼い子供ではなくて。

掴まれた腕に感じる指は剣を扱う為に節が固くなっていて、力を籠められれば次にはもう振り解けないかもしれない。

自分の後をついて転がるように走っていた足は伸びやかに地を蹴るようになり、きっと遠くない未来に捕まえられなくなるだろう。

逢えない時間に失くなってしまうだろう、今の彼をもう少し憶えていたくて。

少し身を離した自分を追って顔を上げた彼の頬に、幼いころしていたように顔を寄せる。

大きくその瞳を瞠った彼の代りに目を伏せて触れた頬はもう柔らかくはなかったけれど、あの時と同じように暖かかった。



















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「NO ANGEL」のまるさまから頂きました〜vv(至福)
も〜エステルが可愛くて可愛くて萌えでございます!
「NO ANGEL」さまではレゴラス&チビアラのお話がもうひとつ
読めるのですよ〜v こりゃもう行くしかありません!
まるさま、ありがとうございました!!
















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